【沿革】

1989年の北海道大学大学祭が起源です。
当時、北海道大学社会心理学講座に勤務していた店主が認知的不協和理論の限界を検証するために大学祭のたこ焼き屋でフィールド実験を計画しました。(詳細は下記【コラム】参照)

ところが初年度は、そもそも美味しいたこ焼きを作ることができずに大失敗。
そこで、次年度へ向けて「たこ焼き同好会」を結成し、専門道具の調達、素材の吟味のみならず月1回の月例会を通してメンバーのスキルアップも図りました。
次年度実験は成功し学会発表もできたのですが、その時点で同好会を解散するのももったいなく勢いに任せて屋台なども作りイベント出店もこなせるようになるまでに成長しました。

店主が北海道大学から北星学園大学に移ってからも活動は続きましたが、店主の本業が忙しくなり2011年に解散に至りました。その後は、卒業生らによる新年会を開催する程度で活動らしい活動はしておりませんでしたが、店主の定年退職を機に「たこ焼大学」という名の店を開店する運びとなった次第です。
詳細につきましては、店内掲示をご確認ください。

【コラム】

(認知的不協和理論の限界を検証したフィールド実験のこぼれ話:少々専門的な話で面倒くさいです)

この実験では、旨いたこ焼きと不味いたこ焼きが必要だったのですが、初年度は大失敗に終わりました。学生さんのほとんどが道内出身で数回の練習程度では本番営業で旨いたこ焼きを作ることができなかったのです。その反省から、たこ焼き同好会を作って翌年のリベンジを図りました。京都某店の視察旅行、大阪道具屋筋専門店からのコンロ、鉄板、道具の購入、月1回の練習会などなど。そのような努力が実って翌年には当時の道内ではおそらくダントツのたこ焼きを提供できるまでに成長しました。学園祭当日の朝を迎えて今年こそはと意気込んだのですが思わぬ落とし穴がありました。みんなの腕が上がりすぎて今度はなかなか不味いたこ焼きを上手に作ることができなくなってしまっていたのです。早朝から何度も挑戦しているその時、隣の芝生で法学部のどこかのゼミが、『味自慢本場のたこ焼き』の幟を掲げ開店準備を始めたので試しにと2パックほど買ってきて一口食べた瞬間、、、皆が「これでいこ」という気持ちになりました。我々がどんなに努力しても、これほどのものは作れないから、これを何回も買ってきて不味いたこ焼き条件の時にはこれを提供しようということになりました(実際には1個お客様が食べた段階で質問紙に回答してもらい、理由を説明したうえで我々のたこ焼きと交換したのでお客様に迷惑はかかっておりません)。余談ですが、『たこ焼き同好会の店たこ丸』の看板を掲げた店の学生が何度も何度もその店にたこ焼きを買いに行くので、そこの売り子が訝しがって「うちのたこ焼きって、そんなに美味しいですかぁ???」とうちのメンバーに聞いてきたのですが、まさか真相は教えられず「まぁ・・・と口を濁して」胡麻化したということもありました。

実験は見事に成功し、「待てば待つほど美味しくなるのか」というタイトルで学会発表にまでこぎつけました。認知的不協和理論に従えば高いコストを支払ったならば獲得したものがたとえつまらないものでも高く評価してしまうというのが通説でした。しかし、もしそれが購買行動や飲食店にもあてはまるのなら、不味くて高い店でも潰れず繁盛しているはずです。でも、実際にはそんな店は潰れています。で、飲食店の場合にはそこにはもう一つ要因が絡んでくるのではと考えたわけです。つまり、提供された食べ物の水準が一定水準以上であれば高いコスト(値段や行列待ち時間など)を伴っていたとしても認知的不協和理論からの仮説通りに高評価に導かれるが、一定水準以下であればそのような現象は期待できず、ただ単に「なんだこんなもの」という不満が発生すると考えました。

実験の結果はその通りで、長い時間待たされた(高いコストを支払った)場合に必要以上の高評価に誘導されるのは美味しいたこ焼きを提供されたお客様だけであって、長時間待たされた挙句不味いものを提供された客は不満を発生させることはあっても決して高い評価はしてくれませんでした。

ではなぜ購買行動では認知的不協和理論の限界が露呈されるのかということについては、少々難しくなりますが以下のように考察しました。

我々は子どもの頃から数限りなくお金とモノ(商品など)あるいはサービス(飲食など)との交換を経験しています。その過程で、自分が支払った金額に見合った満足を期待し、それが裏切られた場合には相手に対する不満や怒りを発生させるという経験を積み重ねてきています。これまで認知的不協和の数々の実験で用いられてきた状況設定にはこの対価という概念が欠けています。こと経済活動に伴う対価は一種の契約にも似た性質を有し、それが満たされない場合には極端に言えば債務不履行にも似た理不尽を客が感じてしまうということなのです。

しかし、提供されたものが一定水準を上回っていれば、普通に認知的不協和理論があてはまり必要以上の高評価も期待できる可能性が高まります。高いフレンチレストランで客同士が「このお料理美味しいわねぇ」と必死で満足感を高めようとしている光景は珍しくありませんよね。

濵 保久


【コンセプト】


当店はもんじゃ焼きやお好み焼きのように自分で焼くスタイルのたこ焼き屋です。
ただ、ほとんどの家にたこ焼き鉄板がある関西と違って北海道ではたこ焼きを家庭で焼くという文化が定着していません。

そこで「たこ焼き大学」では自分で焼く練習を通してたこ焼きスキルを獲得していただくことをお手伝いします。
いわばたこ焼きスクールのようなものです。


ここでは一般的な大阪たこ焼と違って京都の某店を真似た最も難しい作り方を伝授いたしますので、これをマスターすれば怖いものなしです。気の合った仲間との蛸パやご家庭でのたこ焼きなどで腕を振るってください。

濵 保久

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